小民再の夢

小民再の夢〜Vision of Kominsai〜

答が風の中にあるなら、夢は闇の中に・・・?
闇とは主体が生まれて歩む中で、様々な苦労に遭遇し、現場を手探りで改善してきた過程です。しかし現場改善だけだと行き当たりばったりになりやすいため、歩んできた現場に共通する法則のようなもの(マイニング)も同時に高所から探らねばなりません。それこそが主体の個性だからです。
そのマイニングの結果、小樽で小民再が確認してきたことは、以下の通りです。

 

 

【小民再マイニング】
  • ①歴史を未来に活かす
  • ②活かすのは活かす人の志が必要
  • ③志で紡がれるネットワークが必要
【小樽マイニング】
  • ①小樽は歴史を活かせる(再利用)機会が多い
  • ②再利用コンテンツが新たな文化と経済を生む
  • ③小樽の個性に立脚し錬磨する中で夢が育まれる
  • ④夢を実現するために天の時、地の利、人の和を勘案してビジョンを描く

このような抽出を以て、以下夢を語ります。 

■小民再の夢

1.再市場都市小樽
港湾運河を観光運河に、運搬鉄道を散策鉄道に、石造倉庫を音楽ホールに、石蔵をCaféに、銀行建築をミュージアムにしてきた小樽は、このノウハウを世界に視点を拡げ、世界の中古品や骨董品を小樽港に運び、第三埠頭や北運河に集積し、同時にカスタマイズする技術者を育成し、センス良く販売する「世界の再市場」を築きたい。どんなアイテムを集めるかは要議論。
2.ミュージアム都市小樽
現在、小樽には博物館、美術館、文学館などの公的ミュージアムがありますが、かつて「もったいない博物館」「スキー博物館」「北のウォール街博物館」といった私的ミュージアムがありました。現在はニトリの「小樽芸術村」街区に私的ミュージアムが3つあります。ミュージアムには知的な研究がつきものです。ミュージアムという装置は「過去の集積」ですが、これに「研究」を加えると「未来創造」にも波及します。
3.民際都市小樽
現在の観光拠点は小樽運河保存運動の煽りから自然発生的に誕生した堺町と南運河ですが、第三埠頭〜色内〜北運河〜手宮線〜水天宮の丘がそれぞれ拠点化すれば、世界でも珍しい広域観光を徒歩で楽しめるステージができます。
第三埠頭は地元の食をテーマとしたマルシェ、色内はセンスと品の良い小樽周辺の商品販売やCafé、北運河は世界の衣料品や骨董品、手宮線は世界の民際交流拠点で、Café、レストラン、宿泊、展示・音楽ホール、ギャラリー、などの交流ゾーンで市内の空き家石蔵を移築し、沿線に桜を植樹します。

 

 

 こういった小樽らしい観光都市は、どこかの真似をしたのではなく、小樽の歴史が育んだ遺産を活用するAlternativeな夢です。とはいうものの小樽の歴史からマイニングされた個性を前提としています。
世界中から訪れる人々は、こんな小樽を観て「戦争などバカなことはよそう」「持続可能性は歴史に中にこそある」と実感し、平和で持続可能な小樽をモデルに、新たな世界づくりがされる契機や見本になります。
 もちろん貿易や関税の課題や、外国人の居住権の課題も想定されますが、まずは荒削りな夢として提案するものです。

■小民再の戦略

前述の夢をさらに議論し、体系的な一つのビジョンにします。

1.世界と小樽マッチング
小民再が培ってきたマッチングノウハウは、世界中の人々を小樽の古民家にマッチングさせる展望が開けます。たとえば手探りの実績にアメリカ人がいたら、彼を会員にして「アメリカから移住を促すには」と課題提供し、アメリカ人はアメリカ人に呼んでもらいます。
2.小樽民際プロジェクト
小民再が培ってきた交流ノウハウは、移住者の孤立を防ぎ、仲間意識を育み、地元の良識人士と繋げ、長所を活かす窓口や畑をつくることです。これは世界中に通じることです。こういう関係性を民際といいます。これまでの国際だと、戦争や侵略、国家イデオロギー、強制労働や従軍慰安婦など政治的な領域を加味しなければなりませんが、民際は「あなたと私」から全てが始まり持続する関係を展望するものです。
3.洗練された事業部門
このような展望がリアリティを持ち出すころには、小民再の諸事業部門が多
忙になり、持続可能な収入と既存業者との差別化が見込めます。そしてもっと多くの事業部門も誕生しています。母体は成功した企業がよくする持ち株会社「ホールディングス」ではなく、断固として「まちづくり団体」のNPO法人小樽民家再生プロジェクトでいいのです。
4.切磋琢磨
こうした戦略が遂行されると、我々自身もそうですが、交流する全ての人々は「人に会うことが楽しみ」になってきます。同時に小樽の諸現象に刺激され手放しでも、自己覚醒をし、自らブランディングし、互いに学び切磋琢磨する人間関係が創造されます。「切磋琢磨」こそがこれからの人間関係のルールと考えています。

 

■一言で言うと

以上の夢を一言でいうと「もったいない都市小樽」に集約されます。
国連が現在旗振りしているSDGsは、「No one will be left behind(誰一人取り残さない)」との根本思想が低通していることから、中古品をもったいないと感じて大事に使うことも、SDGsにリンクしているということです。日本の「捨てる神あれば拾う神あり」「摂取不捨(全てのものをおさめとって見捨てない)」に通じるのです。つまり「世界に通じ世界の先端」を小樽で展開することを目論んでいます。そしてそれが様々な再利用を展開してきた小樽に相応しいと確信しています。

 

■小民再の戦術

①AI革命の予測
現在のコロナ禍により世界中が我慢を強いられていますが、別なビッグウエイブが着々と裏で進化を遂げているのです。それはAI革命です。仮にコロナ禍がワクチンや経口薬の普及で数年ギャップとすれば、AI革命は今後一生涯という強い影響力が控えているのです。
AI進化は人体に例えると「足」「脳」「腕」「顔の表情」「手の指」という順番で実現し、「足」の進化はすでに自動運転車(AIが運転)が緒についているように、2025年にはバス、タクシー、トラックなどの運転職が国内で123万人失業するといわれています。次の「脳」に至っては事務職や管理職の多くが失業し、社長や管理職、おまけに政治家も・・・。<仕事消滅 講談社新書 鈴木貴博著>
ただしあくまでも可能性をいうのであって、たとえば運送業者がどこも2025年にAI導入という設備投資をするとは限りませんし、労働組合とのいざこざも足を引っ張るだろうし、そもそも自動運転車と人間運転車の混合を取り締まる法整備は大きく遅れるし、何よりも怖いのがハッカーによる乗っ取り事故なので、その取り締まりは多分技術とのイタチゴッコで簡単に自動運転車が普及するとは、簡単には信じがたいのです。
とはいえAI革命の進化が留まることもなく、現実にAIを導入する資本家も増えていくことは疑いありません。ましてや国家が投資してAI環境を整備するという話もでているほどです。
②AI革命と観光ニーズ
今後我々の仕事や生活には間違いなくAI進化を遂げた製品環境は増えていきます。つまりタッチするだけで人体の「足」「脳」「腕」の代わりをする環境になっていくわけです。そこで改めて「観光」の醍醐味を想起してほしいのです。観光地の現場に降り立つと、美しい景色、美味しい食べ物、素敵な店、おもしろい施設、偶然の交流こそが醍醐味で、観光特有の臨場感です。それは映画やテレビ、あるいはYouTubeのようにバーチャルでは決して充足されない醍醐味でしょう。だからAI革命が進化すればするほど観光需要は間違いなく高まります。デジタル環境が増えれば増えるほどアナログへの需要が高まるということです。
ところが今後、高まる観光動機を持つ側がAI革命によって失業していたらどうでしょう。つまりAI革命は失業人口と観光人口が反比例するのです。高度経済成長下とAI革命下の現象の大きな違いがここにあります。「今までで一番観光に出掛けたいと思うが金がない」となるのです。いつの世も成功者はほんの一握りの人々ですから、圧倒的多数がこんな矛盾に遭遇するのは目に見えています。
かつて日本が高度経済成長した際には、家庭に三種の神器が揃い、来年は今年より昇給し、観光資金も蓄えることができたから、全国に旅行代理店が店を構え、おまけにインバウンドも増え続けたため、政府は「東京2020」のオリンピックにはインバウンド4千万人との目標を掲げ、「民泊新法」や「DMO設置」「日本遺産」まで整備するに至りました。まあこれはコロナ禍で、一歩手前で頓挫しましたが、いずれにしても技術進化は国民所得を押し上げる打ち出の小槌でしたが、AI技術はそうは問屋が卸さないのです。
③観光あらため移住
では観光を基幹産業とする小樽はどうすればいいのでしょう。結論は「観光」を超えて「移住」都市を目指せばいいと思っています。「世界の棲み分け」や「移住の自由」時代に既に足を踏み入れている今日、観光の最終段階である移住に向けたまちづくりを考えています。小樽はネット統計上「行きたい街」ベスト10内にしばらく安定しており、「住みたい街」ベスト20内にも顔を出し始めています。全国1718(2023現在)の市区町村の中での順位だから驚くべき人気です。仮に「観光都市小樽」ではなく「移住都市小樽」と銘打っても、新鮮ですが当然との受け取り方をされる時代です。そこで「今までで一番観光に出掛けたいと思うが金がない」人々は、観光需要の高まりを実現するために「観光となれば交通費もかかるし宿泊費も馬鹿にならないが、いっそ移住してしまえば両方の負担は解消される」と思うでしょう。だから今後の小樽は「仮移住環境」を整える方がいいと考えています。なぜ「仮移住」かというと、移住とは結婚や就職に比肩するほど人生の一大決断が必要だからです。「小樽の雪がしんどい」という者あれば「雪こそが美しい景色と芳醇な水分を与えてくれる」という者もいるように、実際に暮らしてみて初めて個々人のフィット感が得られるからです。
「移住」は「観光」の最終到達点ですから、これまで通り観光戦略は推進しながら、小樽を住み家と選びたくなる観光メニューを整備するといいと考えます。そして肝心なのは、小樽のアナログ性です。小樽人の仕事や生活にもAI革命の環境が整うのは当たり前として、基幹産業の観光メニューの醍醐味はアナログで、AI革命の果実の技術は観光メニューの枝葉末節で適度に取り入れればいいのです。
 たとえば東京などで、テレワーク一本で業務が成立している人が、小樽に移住をしても仕事に差し支えはありません。では移住者は小樽の何が良くて移住までしたのでしょう。本質は小樽のアナログ性にあります。小樽側はテレワーク環境を整備するより、アナログ性、特に交流という人間関係のありようを追求するのがストライクコースです。テレワークを職種とする専門家なら自ら仕事環境を整えてから移住するのですから、こちらでテレワークのお世話をするのは釈迦に説法ではないですか。今般「新しいことはデジタル」ばかりの印象を免れません。AI導入の再エネ、GAFAの利益史上最高、全国で半導体産業の投資鰻登りなどから、まさにデジタル化は世界最先端の趨勢です。このようなニュースを毎日知ると焦りますが、「どっこい小樽はアナログの粋」を蓄積すればいいのです。その過程の「情報収集」「情報伝達」「情報処理」「情報発信」などの情報関連で大いにデジタルを利用するのです。
④交流
そこでアナログの根幹である交流でついてです。
交流には媒介が必要です。民際や交流の価値は「あなたと私の間」に共通の目標が必要なのです。それがなければそもそも交流は無意味だし、民際概念を持ち出す必要もありません。そこで小樽の現代史を顧みてください。昭和50(1975)から今日(令和3年)まで小樽にはなんと90を超す「まちづくり団体」が誕生し、現在でも30を超える現役のまちづくり団体が存在しています。そう、小樽の異常な特徴であるまちづくり運動がその媒体役に位置づけられるのです。したがって移住者にはどこかのまちづくり団体に入ってもらう、もちろん既存の団体にこだわらず移住者自身がより客観的な見地から「小樽のこれを磨こう」と仲間を募ってもウエルカムです。
小樽にはそれほど「地域の何かと共に生きる」材料が埋もれています。人と人の個人的な、あるいは利害関係の媒介を言っているのではありません。小さくても小樽の公の御輿を媒介とすれば、そのネットワークは拡がりを持つし、コミュニティとしての絆も深まっていきます。文字通り「地域と生きる誇り」「シビックプライド」というわけです。
 この「材料が埋もれている」土壌は、小樽は大都市でもなく鄙びた田舎でもないからで、良く言うとヒューマンスケール、悪く言うと中途半端だからです。
ヒューマンスケールでは「人間として」ゆえに多様な興味があってもいいし、中途半端では極端な方向へのリアクションが動機になるからです。
⑤移住者特性
移住者は「小樽が好きだから移住した」のです。会社辞令による小樽転勤
のケースではないし、小樽に長らく住み「小樽はもううんざり」という市民のケースでもありません。単純なケースとして「仕事がテレワークで十分だから、移住の自由で小樽に決めた」、あるいは「失業して観光にも出掛けられないから、いっそ小樽に移住した」という移住者を対象にした話なのです。彼らは間違いなく小樽ファンですし、好きな小樽への貢献心も豊富です。移住したての移住者にとって、最も興味のある話は小樽話であることは実証済みです。
小民再が空き家古民家に移住希望者をマッチングしてきた事例から、小樽話には歴史でも、文化でも、観光でも、魚でも、飲み屋でも目を輝かせて興味を持ってくれます。その興味の延長で「まちづくり参加」を促せば、それは彼らにとってむしろ渡りに船なのです。
小樽が好きで移住しても、個人的な視点しか持つ機会がなく、詐欺マガイの連中に騙されるパターンも少なくありません。つまり移住先には移住先の開かれた公にコンタクトできる「良心的ボタン」があるし、小民再はそのための窓口を用意しています。移住者のための交流会を催し、小樽のキーマンを紹介し、巷の楽しい話題に共に爆笑し、心置きなく仲間づくりができる装置なのです。
⑥小樽への海外からの移住
現在世界中で移住行為は増え始めています。ちなみに日本の首都東京の在住
外国人は2015 年10 月現在で約 44 万人、しかも20〜40代の外国人が圧倒的多数を占めているとの報告があります。在住外国人を大別すると「高度な人材」「一般労働者」「留学生」「難民」です。「難民」は日本ではまだ現実化していませんが、どの層にも「日本のどこかの地域で起業」という可能性は秘められています。
この「日本のどこかの地域」を「小樽」として仮定してみましょう。まずVisitorとして初めて観光に来る、おもしろかったからRepeaterになり、住みたいと思い仮移住する、そして在樽外国人として小樽で生活するようになります。こんな段階の中で、「小樽で暮らすための手続き」が問題として浮上してきます。
この問題も「国家戦略特区」や「総合特区」といった国策に申請し、調整する課題が残されています。移住もしくは帰化が困難であれば,長期仮移住のお目こぼし緩和です。就業ビザや留学ビザがあるなら、長期仮移住を前提とした起業ビザがあっても不思議ではありません。
国内にしろ海外にしろ、小樽移住を希望する場合は、小樽に「マッチング審査」機関が必要です。なんでもかんでも受け入れると大変ですし、「特区」の意味を持たなくなります。「マッチング審査」といっても「切磋琢磨の精神」を持ち決して争わず自らを磨くこと、まちづくり団体に加入するか自らまちづくり団体を創設すること、そして日本の法律を守ること。この3点についての講習を受け、抜き打ち審査に合格する場合においてのみ、移住が許されるまでは既存の就業ビザの範囲で小樽暮らしを認める、といった具合です。

■小民再の夢体系
小民再は「人に会うことが楽しみなまちづくり」を夢見ています。そのための大枠として「再市場都市小樽」「ミュージアム都市小樽」「民際都市小樽」を掲げ、戦略として「世界と小樽マッチング」視点を持ち、「小樽民際プロジェクト」を構想し、「洗練された事業部門」を立ち上げ、「切磋琢磨」の精神を基本とする決意をし、戦術としてさらに現代の社会環境を考慮する選択を掲げています。